年々、不法投棄に対する規制・取り締まりは厳しくなっています。一方で、不法投棄発生件数は少しずつ減少してはいるものの無くなる気配はありません。規制や取り締まりが厳しくなっているのに、なぜ不法投棄は発生し続けるのでしょうか?詳しくは後で説明するとして、不法投棄が発生するカラクリを覗いてみましょう。
発生した廃棄物は最終的には①埋め立て、②リサイクルのどちらかに分かれます。
①埋め立て
現在、最終処分場の残余年数は非常に少なく、かなり逼迫した状況と言えます。最終処分場が一つもなくなれば、廃棄物は行き場所がなくなってしまうため、最終処分場は貴重な存在なのです。貴重なだけに、最終処分場に埋め立てる費用は中間処理を委託する費用と比較しても高額です。ここに、不法投棄がなくならない原因のひとつがあります。
②リサイクル
現在、すべてのリサイクル品に対して必ずしも需要があるというわけではありません。例えば、廃プラスチック類がサーマルリサイクルされた固形燃料(RPF)は、石炭等と比較してコストが安くCO2排出量が少ないなど環境負荷も小さいことから、年々需要が伸びています。
一方で、廃ペットボトルをマテリアルリサイクルすることで生み出される再生材は、飲料容器向けに高い品質が求められるため、形成までに選別など細かな作業工程が必要です。そのため、どうしても人件費や作業費、管理費が嵩み、既存の原料に比べると価格が高くなる傾向にあります。「高い→売れない→さらに高くなる……」。この悪循環の繰り返しのために、リサイクルでの廃棄物処理費用が高騰していく場合もあります。
企業は営利を目的とし、当然、できるだけ多くの利益を得るための経営活動を行なっています。その中で、「廃棄物はコストのかかるやっかいもの」「廃棄の手間も面倒くさい」と思っている企業が多いのではないでしょうか。
しかし、誤解を恐れずに言えば、そのような考えの排出事業者の一部が、「コスト削減」という発想から自ら不法投棄を行なったり、処理事業者の一部が多くの利益を得るために排出事業者の目をごまかして、不法投棄を行なったりするのです。不法投棄が発生する背景には、 こうした考え方があることも認識しておく必要があります。
どんな業界でも「よりよく、より安く、より早く、より正確に」といった言葉があります。しかし、すべてを満足させることは、なかなか難しいものです。「早く正確に」と言われた場合、正確さを期するためには必ずチェックが必要で、「早く」ということに逆行します。そこで、両方が満足いくバランスをどこで取るかが大事になってくるのです。
産業廃棄物処理にも同じようなことが言えます。「より安く」にこだわり過ぎる危険性を認識してください。廃棄物処理の最終責任は排出事業者にあります。処理事業者の選定は、コスト面だけを考慮するのではなく、慎重に厳しく行なう必要があるわけです。