委託契約書とマニフェスト

 産業廃棄物処理で必ず登場してくるのが、委託契約書とマニフェストです。

 マニフェストとは、原則としてすべての産業廃棄物処理に必要な書類で、7枚綴りの複写式の伝票のことを言います。排出事業者、収集運搬事業者、処分事業者が、廃棄物処理の過程でこの7枚綴りの伝票をチェックしていくことになります。

 排出事業者(一般企業)の中には、「廃棄物処理の時はマニフェストさえ交付すればよい」「今回は公共の仕事だから、マニフェストを交付しなければならない」などと考えている人も時々いますが、それは間違いです。

 産業廃棄物は、「排出事業者が責任をもって処理しなければならない」と法律で義務づけられています。そこで、自ら処理できない排出事業者は、許可を有する事業者に処理を委託することになります。しかし、廃棄物処理を第三者に委託したとしても責任を免れるわけではないため、委託にあたり、事業者との間で事前に書面でしっかり契約を交わすことが必要です。

 その委託契約書には、「誰が誰に何をどれだけ委託するか」「廃棄物は最終的にどのように処理されていくのか」などを記載しなければなりません。つまり、契約書を見れば廃棄物の行き先、各工程における委託事業者など、処理委託の流れがひと目でわかるようになっているのです。

 契約が無事締結できた後、実際に廃棄物が発生した時に交付するのが、マニフェストです。マニフェストには、廃棄物を管理する役割があります。

 

 しかし、契約書とマニフェストはあくまでも書面にすぎません。書面を作成すれば満足、ではなく、書面を活用して「委託した処理が適正に行われているかを確認すること」こそが重要なのです。

 繰り返しますが、産業廃棄物は「排出事業者(一般企業)が自ら責任を持って処理」しなければなりません。

 仮に処分事業者が廃棄物を不法投棄した場合でも、責任は排出事業者にあるのです。ですから、排出事業者は処理を委託する場合、「この処理事業者は本当に信用できるのか、委託して大丈夫なのか」といったことを事前に調査する必要があります。この時、行政や業界団体が作成しているチェックリストを活用して、処理事業者のチェックを行うことが推奨されます。

 実際の処理委託時には、マニフェストに沿って正しく処理されているかを再度チェックします。つまり、「委託契約書」と「マニフェスト」で2回チェックできるしくみになっているのです。

 契約書の締結、マニフェストの交付は、「廃棄物処理法(廃掃法)」によって義務づけられています。廃掃法は、排出事業者(一般企業)が自ら責任をもって処理をするという義務を定めながら、処理を委託する場合の排出事業者責任を補助する役割を果たしている法律なのです。